現地レポート

【現地レポート⑧】3 回戦へと持ち越した “ 津軽中らしさ ”――青森・弘前市立津軽中学校

2023年1月5日

 評価に違わぬ速さだった。しかし「速さ」は彼らのバスケットにおいて、ほんの一部分にすぎない。それ以外の「らしさ」は、明日以降へと持ち越すこととなった。

「2022年度 第 3 回全国 U15 バスケットボール選手権大会 (Jr.ウインターカップ2022-23)」の男子 2 回戦。弘前市立津軽中学校 (青森) は DARK RED CRABS U15 (福井) を 68-58 で振り切り、3 回戦進出を決めた。

 チームを率いて42年になる津軽中の小野壽昭ヘッドコーチは試合前、今年度のチームを「私が率いたなかでも史上最速のチームだな」と評価していた。その言葉どおり、この日も縦への突破力と、そのなかで交わされる正確なパスで DARK RED CRABS U15 を圧倒していった。しかし速さだけで勝てるほどJr.ウインターカップは甘くない。

「このような大きなアリーナでプレーすること自体、チームとしても緊張感があったんですが、それ以上に立ち上がりから津軽中らしいプレーがなかなかできなくて、自分たちの流れを持ってくることができなかったことは反省点です」

 キャプテンの #4 小泉俊介選手がそう振り返る。小野ヘッドコーチの言葉から、今年度の「津軽=速さ」と思っていたが、それだけではなかった。速さ以外の面を小泉選手が明かしてくれる。

「日本一 3 ポイントシュートが入るチームだと自信を持っていることと、ターンオーバーが少ないことが、津軽中らしさだと思っています」

 その 2 点に関して言えば、3 ポイントシュートは25本の試投に対して成功は 7 本 (成功率28%)、ターンオーバーも20本を記録している。彼が反省を口にするのも無理はない。それでも、もうひとつの武器であるスピードを、ポイントガードの小泉選手が、流れの中で絶妙な緩急をつけながらコントロールできていたところに勝因の一つはあったと言える。

 小泉選手自身もこの大会にかける思いは並々ならぬものがある。
 津軽中は2022年 8 月に北海道でおこなわれた「全国中学校バスケットボール大会」に出場し、準々決勝まで勝ち進んだ。結果としてそこで準優勝校の野々市市立布水中学 (石川) に敗れるのだが、小泉選手は大会直前に新型コロナウィルスの濃厚接触者と判定され、隔離期間が終わるのが大会の前日だった。つまり、ぶっつけ本番で大会を迎えなければならなかったわけである。「不完全燃焼でした」と小泉選手も振り返っている。
「だから、その借りを返すつもりで、強い気持ちでこの大会に入ってきました」

 前日の試合が不戦勝となり、今日の試合が初戦となった津軽中は、前記のとおり彼ららしさをもうひとつ出せなかった。それでも小泉選手の、中学バスケット最後の全国大会への思いが、津軽のポイントガードに求められるゲームコントールだけは見失わせなかったのだろう。

 明日の 3 回戦はライジングゼファーフクオカ U15 (福岡) と対戦する。率いるのはかつて福岡市立西福岡中学などを率いていた鶴我隆博ヘッドコーチである。「小野ヘッドコーチvs.鶴我ヘッドコーチ」。中学バスケットボールファンにとってはたまらない一戦と言える。むろん、戦うのは中学生プレーヤーたち。小泉選手はポイントをこう話している。

「相手は自分たちよりも高さがあるので、オフェンスリバウンドを取らせないとか、そうした細かいことを徹底しなければなりません。オフェンスでは、先ほど話した “ 津軽中らしさ ” を明日は出していきたいと思います」

 彼のインタビューを終えた直後、小野ヘッドコーチにも明日の試合のことを聞くと、「鶴我ヘッドコーチと久々に対戦できる。勝ち負けよりもこれが津軽中だという、“ 津軽中らしさ ” を存分に出したいね」と口にした。
「小泉選手も同じことを言っていましたよ」と伝えると、小野ヘッドコーチはニンマリとして「同じだな」と頷いた。ヘッドコーチと、キャプテンであり司令塔の思いは一致している。
 明日の 3 回戦、津軽中vs.ライジングゼファーフクオカ U15 の一戦は間違いなく熱を帯びるはずである。

NOW LOADING

TOP