現地レポート

【現地レポート⑦】受験勉強との両立という困難な道にあえて挑んだ HAMAMATSU BRUSH

2023年1月5日

シード勢の一角として大会 2 日目に登場した男子静岡県代表の HAMAMATSU BRUSH (以下、BRUSH) は、2 回戦で京都精華学園中学校 (京都。以下、京都精華)と対戦した。

身長193㎝の #84 阿部翔温を筆頭に高さとパワーを誇る京都精華は、昨年、北海道で行われた全国中学校大会 (以下、全中) ではベスト16の成績だったが、予選リーグ戦では、後に同大会で優勝を飾ることになる四日市メリノール学院中学校 (三重) と 46‐53 という接戦を演じた実力あるチーム。

そして BRUSH は、昨年の全中で第 3 位の成績を収めた与進中学校を中心に、複数の中学校の選手で構成されたクラブチームだ。全中後に部活を引退した 3 年生でチームを構成。今回のJr.ウインターカップを目標に練習を重ね、県予選ではライバルの KAISEIKAN を僅差で破り、念願の出場権を獲得した。

京都精華との試合は、#17 宮本聡の 2 ポイントで先制されたものの、BRUSH もすかさず #86 山田悠睦の 2 ポイントで同点に。さらに、キャプテン #7 末永蒼の 3 ポイントシュートで 5‐2 と逆転すると、その後、10‐8 までは BRUSH がリードを保つ。しかし、残り 3 分01秒で京都精華 #35 山崎燦吾の 3 ポイントで逆にリードを奪われると、さらに #3 宮本耀にも 3 ポイントを決められ、結局、第 1 クォーターは 13‐16 と 3 点のビハインドを負って終了。続く第 2 クォーターも、京都精華の高さとパワーに対して BRUSH は全員参加の熱い守りで対抗し、29‐31 と追いかける展開ながらも必死で食らい付いていった。

だが、京都精華が牙をむいたのは後半第 3 クォーター。#3 宮本が 2 本の 3  ポイントをはじめ10得点を挙げるなどして、BRUSH は 37‐45 とリードを 広げられる。そして、最終第 4 クォーターで京都精華のプレーは攻防ともに さらに強度を増し、結局、BRUSH は 39‐56 で敗れた。

BRUSH の安川剛史コーチは、「相手のリバウンドが勝負の分かれ目だと 思っていたので、頑張ってリバウンドで競り合ったのですが、そのこぼれ球を 取り切れなかったところや、相手のディフェンスに対してガード陣がミスを 犯してしまったところ、そして 3 ポイントで差が広がってしまいました」と 試合を振り返りつつ、「受験勉強を優先し、練習は週 1 回と限られた時間の中、よくここまで戦えるチームになったと思います」と奮闘した選手たちを称えた。

ミニバスチーム浜松与進少年団 (以下、浜松与進) の指導も行っている安川コーチだが、中学校の部活動に縮小化の傾向がある中、子どもたちの練習環境の維持を目指して令和元年に立ち上げたのが HAMAMATSU BRUSH だ。浜松与進は2020年 3 月に開催が予定されていた全国ミニバスの出場権を獲得していたが、当時、猛威を振るい始めた新型コロナウイルスの影響を受けて大会は目前で中止に。涙をのんだ当時の子どもたちが成長し、メンバーの多くは与進中の選手として、昨年の全中に同校21年ぶりの出場を果たし、そして前述のように第 3 位の成績を残した。

昨年秋に部活を引退した選手たちだが、与進中を含む複数の中学校の選手が HAMAMATSU BRUSH へ移籍。受験勉強とともにJr.ウインターカップ出場権獲得を目指すという困難な道をあえて選んだ。「小学校の頃からのライバル同士が一つのチームとして目標に向かうことができたのは本当に幸せなことでした」と安川コーチは目を細める。そして、「高さ、スピード、シュート力、その差を埋めるにはどうすればいいかを考えながら今日は戦っていました。チームとして機能した時間帯もありましたし、一生懸命やる中でのミスは仕方のないこと。子どもたちの気持ちが伝わってきて、ベンチも含めて一体となって戦えた試合だったなと思います」と語った。

キャプテンとしてチームをまとめ、この試合では #87 尾藤遙陽の13得点に次ぐ12得点挙げた #7 末永は、「甘くなかったですね。こっちが少しでも油断するとすぐにボールを取りにきたりするので、そういうところはさすがだなと感じました」と京都精華との戦いを振り返った。そして、「ディフェンス後の速い攻めを何本かすることもできましたし、いつもどおりのプレーができたところもありました」と、全国の舞台で得られた自信もあったようだ。

春になれば中学を卒業し、それぞれの高校へと進学する選手たち。浜松与進のメンバーだった #7 末永は、「小学校から数えて、一番長い子は 9 年間ずっと一緒だったので、楽しい思い出がいっぱいあります。高校へ行ってライバルとして対戦するのも楽しみです」と笑顔を見せ、中学最後の試合を全力を尽くして戦った充実感を漂わせていた。

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