現地レポート

【現地レポート⑫】スーパースターのいないチームが力を尽くして戦った32分 ―― 光市立島田中学校

2023年1月6日

 男子準々決勝進出を懸けた 3 回戦、前回大会でベスト 4 の成績を残している Lake Force (滋賀) と初出場の光市立島田中学校 (山口。以下、島田中)の対戦は、経験で勝る Lake Force が優位に展開するかと思われた。

 しかし、いざ試合が始まってみれば、序盤からエンジン全開でスタートダッシュに成功したのは島田中だった。#8 有澤弘太のドライブで先制すると、同じく #8 有澤の 2 ポイント、#6 有田悠馬の 3 ポイントと連続得点を挙げ、開始 5 分を過ぎて 7‐0 とリードした。

 スタメン 5 人以外にも、ベンチから登場したチーム最小152㎝の #5 中村旬堵から、チーム最長身182㎝の #9 崎原匠海まで、コートに立つ選手がそれぞれ躍動した島田中は、攻防で Lake Force に臆することなく立ち向かい、その後も試合を優位に展開する。

 前回大会のメインコートの雰囲気を知るメンバーも多い Lake Force も #8 藪元太郎を中心に奮闘して追い上げ、一時は 22‐24 と逆転を許すが、結局、前半は 28‐24 と島田中がリードして終了。後半第 3 クォーターも、チームを勢いづける #8 有澤の 3 ポイントでスタートした島田中は、最大10点差をつけて勝利へと突き進んでいるかに見えた。しかし、その第 3 クォーターの残り49秒で #8 藪が決めた 3 ポイントを反撃ののろしに Lake Force が逆襲を開始。第 4 クォーターの残り7分22秒、#9 音山繁太の 2 ポイントシュートで 43‐44 と再び逆転される。

 しかし、追い付き、追い越された島田中はその波に飲まれることなく、#10 松田一晟や #8 有澤の 3 ポイントをはじめ、#6 有田、#4 木村らの奮闘で、“ 取られたら取り返す!” という意地のバスケを見せて対抗した。

 最後に勝負を分けたのは、試合終盤の勝負どころでの集中力の高め方と、難しい状況でシュートを決め切る精度の高さだったかもしれない。どちらのチームも勝者としたいほどの熱戦だったが、最後に勝ち名乗りを上げたのは Lake Force だった (得点は Lake Force の 59‐56)。

 島田中を指揮した原裕之コーチは、「勝ち負けじゃなく、自分たちのバスケットをやろうと子どもたちには話していました。一生懸命粘ること、走って走って、走りまくることに集中し、結果的には負けましたが、そこは体現できたんじゃないかなと思っています」と選手たちの戦いを振り返った。「うちにはスーパースターはいません。普通の中学校の普通の子どもたちですが、限られた時間の中で、とにかく一生懸命、全力で練習に取り組み、一人ひとりの頑張りで “ スーパーチーム ” になろうと」

 早稲田大を卒業後、地元・山口県で教員となって33年目の原コーチ。過去には U16 日本代表チームのアシスタントコーチを務めた経歴も持つが 、自身のチームとしての全国大会出場は今回が初めて。「この子たちが連れてきてくれました」と原コーチは激戦に敗れうつむく選手たちを慮りながら語る。そして、「選手たちには “ 出るだけではなく戦おう ” と言っていましたが、今年のチームは後輩たちに続く結果を残してくれました。またこの舞台に帰ってきて、さらに上を目指します」と自身を奮い立たせた。

そんな原コーチが、「練習からずっと彼がチームを引っ張ってくれました」と称えるキャプテン #4 木村は、「コートもベンチも応援席もみんな一丸となって、しっかり声を出して頑張るチームでした」と全国の舞台を振り返り、島田中で苦楽をともにした仲間たちとの日々を、「すごく貴重な時間でした。もっと一緒にいたかった」と慈しむように語った。力を尽くして戦った32分は、そんな貴重な時間の締めくくりとして、きっと島田中の選手たちのこれからの人生を強く支えてくれるに違いない。

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